長く通っている整骨院がある。

正確に言うと
数年前、肩や首や腰が痛くなって
どうしようもなくて行った近所の整骨院が
とてつもなくアタリ
すさまじきゴッドハンドで
何かあったらここにくれば間違いない
駆け込み寺のような先生がいた。


首を少し触って

「あれ、歯医者行きました?」

と聞かれた時に

恐怖と尊敬を2:8で感じた。


ゴッドハンドな上に

痛みの原因や処置の内容を

全て納得できる理論で説明してくれて

理屈おばさんには快適だったが

何年か経って一駅向こうに移転して

しかも保険適用外っていうもんだから

行かなくなってしまった。


ところが今年の春頃

信頼できる先輩の

「漫才は姿勢や所作の美しさが重要」

という言葉にハッとして

一駅向こうに駆け込んだ。

相変わらずすさまじきゴッドハンドだったし

超理論派だった。


3ヶ月間、週2で通うことになった。

家賃ほどのお金を自分の体にかけてみた。


整骨院が高いのか

家賃が安いのか。


圧倒的後者であるが

前者でもある。


3ヶ月後には、前のめりだった体が

ほぼ真っ直ぐになった。

やはりすごい先生だ。


地べたに座らないこと

あぐらをかかないこと

寝ながらスマホを触らないこと

むしろスマホをなるべく手放すこと

毎日30分歩行すること

を命じられた。


地べたであぐらをかき

寝ても覚めてもスマホを触っていて

全く運動をしない人間だったが

全てお見通しだった。


言われるがまま

椅子を買い

たまには歩くようになった。

スマホはまだまだ触ってしまう。


だから今も、ゆるく整骨院に通っている。

そしてまた新たな課題がきた。


糖分を摂らないこと

なるべくパンを食べないこと

ケーキなんてもってのほか。


私はこの日

整骨院の近くにある

おいしいケーキ屋さんで

ケーキを買って帰るつもりだったのだ。


ケーキを買って帰るうきうきは

整骨院では隠していたはずだ。

それなのに先回りされて

ケーキを封じられるとは。


ここまでくるともう超能力者なんだと思う。


従うしかないのだ。

あらがえぬ。




ぬのこ