昨年は、リチウムイオン二次電池の発明者の1人である吉野彰先生がノーベル化学賞を受賞された。

また、一昨年も京都大学名誉教授の本庶佑先生が画期的ながん免疫治療薬「オプジーボ」の開発に成功しノーベル生理学・医学賞を受賞された。

 

またその前には、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥先生がノーベル生理学・医学賞を受賞された。


このようにわが国は今世紀に入って19名のノーベル賞受賞者を輩出し、米国に次ぐ第2位の地位を占めており、これは非常に喜ばしいことである。

 

一方、中国は1名であり、韓国は未だに受賞者がいないことを考えると極めて素晴らしい成果である。

 

ただ、この状況が将来も続くとは楽観できない状況になっている。

 

日本の論文数は、数年前までは米国に次ぐ第2位であったにもかかわらず、最近は中国にも大きく差をつけられている。

 

 

したがって、このままでは日本の科学技術の勢いがなくなり、

これまでのように多くのノーベル賞を受賞できなくなるのではないかという心配がある。

 


そこで、科学技術立国としてどうすれば科学技術を日本の生命線として育てることができるかと考えると、やはり欠点を補っていく必要がある。

 

アカデミアで研究をしている博士研究員の数はあまり増えていない。

 

特に、40歳未満の博士研究員の数が4万3千人しかいないが、あと5千人程度増やしたい。

 

加えて、こういった研究者の待遇が悪い、例えば5年ぐらいの有期の雇用であるケースが多い、という問題がある。

 

(狩野光伸・岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科教授をはじめとする全国の理工学系に携わる

若手研究者および大学関係者を招き、研究成果を出すことの難しさや育児と研究の両立などについて意見交換会した時の様子)

 

また、博士号を取得しても産業界が必ずしも採用するとは限らないので、修士卒で就職する人が多い。

 

さらに、企業で高待遇を受けているかというと必ずしもそうではない。

 

他方、5Gの時代を迎えて中国ではIT技術者の大卒初任給(年収)が2千5百万円という話もある。

 

人的評価に大きな差があるのが現実なのである。

 

したがってこれから先、高い給料を出さないと世界から優秀な人材を集められず、非常に大変なことになってしまう。

 

そういう意味で、研究者・技術者の待遇改善がまず第1番にやるべきことである。


第2番目に日本としてやるべきことは、発明・発見されたものに対する評価を高めることである。

 

 

素晴らしい発明でありながら極めて低い特許料しかもらえていないアカデミアの先生方も現実におられるし、

アカデミアと製薬企業との間で訴訟になりそうだという話も聞く。

 

こんなことでは日本という国はサイエンスに対する評価の低い国であると外から見えてしまうのではないかと危惧している。

 

わが国は世界第3位の経済大国であり、技術においてはトップクラスであるという自負心を持っているが、

これから先は産業界が科学技術を正しく評価していると外から見てもわかる体制にしていく必要がある。

 

素晴らしい発明・発見が正当に評価される社会にすることによってこそ、

わが国は科学技術立国としての強い立場を末長く保持することができる。


昨年、NASAのジム・ブライデンスタイン長官から月への到達を目指すアルテミス計画に参画して欲しいという強い要望を受け、

安倍総理にご相談を行い、わが国も参画することになった。

 

 

2023年頃にわが国の技術も融合して月へ人を送ることができる。

こうした宇宙戦略の分野においても、日本は然るべき地位を占めておく必要がある。

 

 

なぜならば、隣国の中国は世界で初めて無人探査機を月の裏側に着陸させた。

 

中国のこの脅威と映る著しい科学技術の進歩をただ見ているわけにはいかないのである。

 

今後も日米協力を基軸として防衛・安全保障、災害対策その他産業の進展に役立つような体制を国策として整える必要がある。

 

その知恵を出すのが私の国務大臣として任務である。


先般の新型コロナウイルスの事例に対してもわが国の医療技術でもって迅速に対応することが必要であり、

そのことを世界が見ているということを考えると尚更科学技術の進展は欠かせないものである。

 

 


令和2年2月
衆議院議員 竹本 直一